さようなら
手が痺れてる。
お酒を飲みすぎたみたい。
久しぶりに、本当に久しぶりに会ったあなたは、ヒゲが生えていたね。
一年ぶりに会ったあなたは、今までどおり意地悪でひどい人だったね。
BARにいたときは、心地良い意地悪な感じが、好きだった。
なんでそんなに好きでいてくれるの?
なんども好きと言った。
なんども、ずっとこれまでも今もずっと好きなままなことを伝えた。
あなたは、彼女の化粧の匂いが好きみたい。
ニーズがないというけれど、あなたたちはとてもお似合いだよ。
赤羽で、私をおいて帰ったのは、治安が良いからだった。
池袋は、前も今日も、改札を通るまでいてくれたみたい。
振り返ったらいなかったけれど。
ホテルに入って、エレベーターで二人で笑った。
部屋に入って、パピコを食べた。
キスをした。
お風呂に入ろって言われて、お風呂に入った。
初めて見た、あなたの裸。
顔をずっと引き寄せて、目に焼き付けたかった。
私の中に入れてくれなかった。
口や、手や、そういうのはひどく扱ってくれたけれど、
時折触ってくれる私の髪や、感じてくれるあなたの表情や息遣いがたまらなく気持ちよかった。
でも、とても遠かった。
こんなに近くに来てくれたのに、一番離れてしまった。
帰り際、手を繋いでくれた。
指輪をはめたら、カバンの中に返された。
いらないよ、ごめんね、さようなら