愛するものがありません、見つけたい

誰にも選ばれたことがありません

もう会わない、会いたい

前回会ってから、またすぐに会えることになった。

「今からこれる?」じゃなくて、「この日に会おう」って、約束の仕方が変わって嬉しかった。本当は映画を見て、ご飯を食べておうちに行こうってなってたけど、私の体調が芳しくなくて直でおうちに行くことになった。

ギャラリーが始まってからは夜遅くにならないと連絡がつかなくて、その日も遅くになるんだろうなあと思ってたけど、ちゃんと私との約束を優先して帰ってくれていた。

バスから見た月はこの夏の終わりで一番近くて丸くて、綺麗だった。

 

始めて一人でちゃんと行く先生の家は、最初迷ってしまったけど、道のりは簡単だった。暗い道の先に、明るい先生の家の光が見えて、ひょいって頭を覗かせた先生の顔に心が弾んだ。こんばんはって言って中に入ると、ご飯ができていた。

私の大好きな和食。久しぶりのお魚だった。秋を感じるサンマと、浅漬け、トマト、それから青菜と豆腐のお味噌汁。しばらくしてから雑穀米のご飯も炊けて、机を囲んだ。

魚が綺麗に食べられて嬉しかった。素朴な味が美味しくて、私が来るまでに、私のために用意してくれたんだと思うと幸せすぎて戸惑ってしまった。

 

それからハイボールを飲みながら、おしゃべりをした。私の体調についてちゃんと知ろうとしてくれて、嬉しかった。そういえば、って言って近所の人からもらったと言う桃を切り分けてくれて美味しかった。

 

それからシャワーを浴びて、二階へ上がった。

いつも通りPCでニュースなんかを見ながら、始まった。もう慣れてしまっている自分に驚いた。いつも以上に敏感になっていて、痛みさえ感じていた。

心地よさに酔いしれながら、「私はセフレ何号?」って聞いたら「セフレいないよ、彼女もいない」「彼女もいないの?」「彼女はもう作らない」って。

それから悲しくなって、私がどれだけあなたに会いに行っても、幸せな未来はないんだと思って苦しくなった。

無情にも夢を見るほど眠れて、私の体調を気遣ってずっと抱きしめてくれる程度で、無理にしようとはしなかった。

 

お昼、ホットサンドを作ってくて美味しくて、「もう会わない」って言った。先生は特に本気にせずに「もう会わないのかあ」なんて。

 

バスまで送ってくれて、「あの本、あげるよ」って言ったら「え、ちゃんと返すよ、また会うでしょ?」なんて。「会わないよ」会いたいけど。

 

結局おうちについて、連絡してしまった。だってもう会いたくなってしまった。

身体中からあなたの匂いがする。服じゃなくて、肌から感じる。シャワーを浴びると消えてしまいそう、香水なんてつけられない。

 

きっと生理が終わったらまた、会いに行くんだろうなあ。