愛するものがありません、見つけたい

誰にも選ばれたことがありません

君に任せるよ

3月にキスをしてから、久々にあったあなたは随分酔っていた。

 

土曜日の夜20時間際、急にインスタのDMからメッセージが来て一瞬にして心臓がスピードを上げていったのを覚えている。

メッセージは2件来ていて「今からこの駅で飲もう」「返事くるまで10分待つ」って、どんな横暴な野郎なんだと正直びっくりしたけど、即レスで「行きます」って返事した。お風呂に入ってなくて後悔したけど、速攻でシャワーを浴びてサッと化粧して下着と服を着替えて、夜の街に飛び出した。

 

黒猫チェルシーを聴きながら、脈打つ鼓動にときめきながらも冷静な自分がいた。どんな顔して会えばいいんだろう、前キスしたこと、今日話すのかな、とか。そうこうしているうちに待ち合わせの駅について、改札を抜ける前からもう見つけてしまった。改札の丁度真向かいに、柱にもたれかかってずっとこっちを見ている彼を見つけた。嬉しくて、「あ、やっぱりこれ本物だ」と。ギリギリまで気づかないふりをして、目があって、笑った。いつもみたいに「30分でこれると思わないでくださいよ」「ふっ軽ナメんな」とか笑い飛ばして、ちゃんと会話ができていることが嬉しかった。

 

ずっとあなたは私に対して「its up to you」君に任せるよって言って、どのお店に入るのかとか正直プレッシャーだった。話す内容もあんまりちゃんと聞いてない気がして、実はそんなに楽しくなかった。怖かった。呼ばれて来たのになんだこの仕打ちはとも思った。結局お代は全部私が払って、貯金残高も見られて「結構貯めてるね」と驚かれたりはしたけど、多分もう覚えてないんだろうな。

 

チャンジャとか、お刺身とか、いろんなものを私にあーんして食べさせてくれた。前はそんなことしてくれなかった気がするけど。

それから「ピンサロ一緒に行く?」「◯◯っていいおっぱいしてるよね。DかFはあるでしょ」って言われたり、おっぱい揉まれたり、後ろからギュって抱きしめられたり、羽交い締めにされたり、髪をわしゃわしゃされてせっかく結んだ髪も何回も結び直して。

「◯◯、ホテルで一晩過ごす?」「イマラチオくらいならしてあげるよ」って言われて、正直戸惑ってた。なんでそんなことが言えるんだろうって。

 

でも後々考えて、あの時私が応じていれば、ワンちゃんはあったんだろうなと、私はいつも選択を間違えるやつだなあと思った。

 

しまいには「つまんない女になったね」って言われて。散々。

急な呼び出しにも応えて、お金も全部支払って、痛いことにも耐えて、私はなんでこんなに頑張ってるんだろう、好きではなくもう執着なんだと思う。

 

そのあと、駅が近くに見えたのが嫌で、「バイバイじゃあね」って言ったら、彼はもう人混みに消えてしまった。前みたいに曲がり角を曲がると待っててくると思ってたのに、もういなくて。駅の入り口にも彼らしい人影は見えなくて。それがとても悲しくなって、コインパーキングで一人で泣きながらタバコ吸ってたら、先客の黒人に話しかけられた。

 

「泣かないでよ」「どうしたの」「大丈夫?」全部カタコトだったけど、それが優しかった。友達のBARがあるから、おごってあげるから音楽聴いて踊って忘れようよって言われて、僅かな正気を保って「殺されないかな、薬とか盛られないかな」と思ったけど、もうどうにでもなれって思って店に入った。

 

結論、とてもいい店で、お客さんたちもいい人たちばかりだった。泣いている私を慰めてくれて、暗がりでよく見えない私を可愛い可愛いと褒めてくれて、何度か泣きそうになった。可愛いって言って欲しかったのは彼にだったんだなって。

 

それから黒人となんやかんやディープキスをしてしまった。なんども。海外の人のキスってめちゃくちゃ長いんだなって思った。でも全然気持ち良くならなかった。

 

彼が良かった。全部彼が良かった。