愛するものがありません、見つけたい

誰にも選ばれたことがありません

タバコ

久々に会ったあなたは、どこか疲れた目をしてた。

一緒にいる時間が窮屈で、何度もトイレに行って「早く帰りたい」と声に出しては、久々にあなたに会えた幸せを噛み締めていた。

近くの芝生で一緒にお酒を飲んで、寝転んで、私があなたを見ていないときに、あなたが私の写真を撮っていたのを私は知っている、気づかないふりをしたの。

 

それからどうしてかカラオケに入ってた。どうやって入ったのかは覚えてない。

すごく乱暴にマラカスを机に叩きつけていたのは覚えている。

最初ははだけた私のスカートを直してくれていたけど、だんだん距離が近くなっていた。下ろしたての靴を取られて、見つめ合う瞬間ができた。

あっという間にキスしてた。私が「キスしていい?」って聞いて、「いいよ」って。

思ってたよりもちゃんとしたキスをあなたとできて、とても嬉しかったのと同時に、あなたの大切な人を裏切っている罪悪感が一緒に流れ込んできた。

口に入ってきた指も、嫌いじゃなかった。悔しかった。どうして私はあなたの一番になれないんだろうって。

 

結局酔いすぎてたたなかったあなたを睨んで、泣いて、その間にあなたは吐いたらしいね。飲みすぎなければ一緒に夜を過ごせた?

 

一人で帰ってくれればよかったのに、私がどこへフラフラ行こうとずっと後ろについて来てくれていた。振り返ればあなたがいる小さな幸せを、絶望の中で拾い集めていた。駅が見えるネオン街の路地で、座り込んで、最後のタバコを吸った。BOXだから握りつぶせなくて、悔しかった。

「ずっと友達でいたかった」

「ずっと見守っていたかった」

どうして全部過去形なの?もう全部ダメなの?もう一緒にいられないの?

 

最低な人だし、私はもっと最低。あなたに言った言葉は全部、自分に向けて言った言葉だった。「死ねばいいのに」「来なければいいのに」「会いたくなかった」

 

終電で帰って、電車のホームを降りて一人で歩いているときに、涙が止まらなくなった。

玄関で、立っていられなくなってへたり込んでしまった。嗚咽を交えながらずっと泣いてた。わけもわからず、いまこの状況が耐えられなくて、どこからも力が入らなくて泣いていた。

ようやく部屋の中に入っても、コートを脱ぎ捨ててカバンをおいて、また泣いた。どうあがいても幸せになる未来の見えない関係と、私でたたなかった屈辱に耐えられなくて泣いた。

 

それでもきちんと化粧を落として、すぐにベッドに入った。4:44分に起きて、水を飲んだ。私も随分お酒を飲んだらしい。

お昼過ぎに、送っていた返事が来ていた。希望を持たせるようなことを言わないでほしい。

私はやっぱり最低なので、また、連絡をすると思う。生理周期なんか気にしながら、また、連絡をする。今度は飲みすぎないように、きっと。

 

私はいつまでも許されない。許してはいけない。幸せはいらないから、あなたの隣にいさせてほしい。ずっと一緒にいなくていいから、金曜日の夜だけでいいから。

 

私の中から消えていなくならないで。届かない場所に行くのがこんなに苦しいことなんて知らなかったから。