愛するものがありません、見つけたい

誰にも選ばれたことがありません

大人になった日

半年前にマッチングアプリで知り合って1月に一度映画デートした男性から、メッセージがきた。私の勉強している分野について話を聞きたいのと、面白い映画があるから一緒に見ないかと。

 

だめ男の件もあり、恋愛はしばらくいいかなと思っていた矢先。映画デートならまあ何も発展しなくても楽しいかなと思い、本当に映画を見るだけと思い承諾の返事をした。

 

それからよく連絡が来るようになり、「こっちが誘ったから」とすべての支払いを済ませてくれた。そういう紳士な部分に優しさを感じたまま、当日を迎えた。

向こうの都合で少し会うのが遅くなり、映画館の場所で迷っていて「もう帰ろうかな」なんて弱気になっていた私を見つけて呼びかけてくれたのも彼だった。

 

それから二人で急ぎ足でシアターに向かい、座ると同時に映画が始まった。本当にギリギリだった。世相を表したキャッチーなタイミングで作品を見れて本当に良くて、身終えた私たちは近くの居酒屋に入ることになった。

少し年の差があるけれど、二人とも遠慮なく心地よい感じで会話ができていたと思う。価値観や視点が近くて、下手に着飾ることなく話すことができたのが嬉しかった。終電は二人とも同じくらいの時刻だったけど「最悪タクシーで帰るので大丈夫」と伝えて、お店のラストオーダーまでい続けた。

 

それから、おうちへ行くことになった。

「前は入れてくれなかったのにどうして?」と聞いたら「あの時迎えてたら、そういうことにすぐなっちゃってたでしょ。それは良くないなと思ってあの時は断ったんだ」という言葉で、この人は本当に優しい人だなと思った。

タバコを買って、彼は朝ごはんを買って、タクシーで彼の家に向かった。「手を繋いでいい?」って聞いたら、繋いでくれた。冷たい私の手と、暖かい彼の手が嬉しかった。

 

おうちについて、彼の作品を見せてくれた。とても強い作品だった。「この部分はどうして腕がないの?」と聞いたら「よく気づいたね」と感心してくれた。それから彼が先にお風呂に入って、私もお風呂を借りた。シャワーだけで良いかなと思ったけど、ほかほかの湯船が私を誘ったので、チャポンと浸かった。彼が書いたらしい富士山の絵が優しくて好きだった。

 

それからベッドに二人で入って、抱きしめられた。もっとこっちにおいでって。私が今だと思い、初めてなことを打ち明けた。そうしたら引くこともなく、丁寧に丁寧に扱ってくれた。とても幸せな時間だった。何度も彼に「私、変じゃない?」と聞いて「変じゃないよ」と言ってくれた。嬉しかった。痛みさえも心地よかった。

 

それから何度か寝て、行為をして、また寝てを繰り返し、鳥のさえずりで朝を感じたのは久しぶりだった。それから二人で起きて、当時タイムリーな会見を見ながら朝ごはんを食べた。はんぶんこしてくれたのが嬉しかった。

 

それから最寄りまで送ってくれて、もう会っていない。

連絡はしているけれど、次に会う予定の日も決めたけれど、すぐに会いたいと思ってしまう。子供みたいな私を許して欲しい。

 

仕事で悩んで、彼が忙しいと知っていながらつい連絡してしまった。まだ付き合っているわけでもないのに。求めていた答えとは違って、少し悲しくなったけれど、その通りに動いて見ると心が落ち着いた。依存先を増やすと楽になると本当に思った。

 

心配をかけてしまったことや、私たちの関係が曖昧なこと、あんまり急ぎ過ぎても良くないから、次会おうと言っている日まで私からは連絡は控えようと思った。

どう転んでも、私には素敵な人だったと思う。