愛するものがありません、見つけたい

誰にも選ばれたことがありません

ブックオフ依存症

私の家の近くには、ふらっと行ける距離にブックオフがある。

地元広島にいた時に足繁く通った店舗よりかは少し規模が小さいけれど、漫画コーナーよりも小説コーナーが充実していてもう常連になっている。

多分多い時で週2くらいで通っている。忙しい時でも2週に1ぺんは行かないと気が済まない。それくらい私にとってブックオフはメッカの聖地のように感じているのだ。

 

地元広島、特に私の住んでいた地域は子供が多く、それこそ駄菓子屋やゲームセンターなど放課後は子供達が押し寄せるような賑やかな街だった。

私も駄菓子屋やゲームセンターに行くことはあったが、特に好きだったのは古本屋だった。個人で営んでいた、陳列棚のほとんどを漫画が占めた古本屋だった。

少女コミックを始め、男女がセックスをするシーンが特に大好きだった私は、ひたすらえっちな表紙かつ「あ、それえっちな漫画なんだ〜」という際どいラインを攻める作品をよく探している子供だった。

幼馴染のユウコちゃんはいつも一緒で、私がそんなえっちな漫画を探しているとはつゆ知らず、よく着いてきてくれていた。

 

その古本屋では当時、私たちのような小学生でも家にある適当な漫画本を持っていけば、いくらかで買ってくれるガバガバな買取システムだった。

私とユウコちゃんはそれぞれ買いたい本のために、家にあるもう読まない漫画をヨレヨレの紙袋に詰めて持って行くことがあった。特に覚えているのは、大雨の日だった。

 

「すごい雨だね」「本が濡れないように木の下を通って行こう」なんて通り道の神社にある木をわざわざ経由して、慎重に持って行った。

かろうじて誰が入ってきたかわかるように、そのガバガバな店のドアにはベルがついていた。チャリンチャリン、なんて今では懐かしい音を当時は気にせず聞いていた。

「おばちゃん、これ買ってください」「私のも」

ドスンと、レジ内で雑誌を読んでいたおばちゃんの目の前に、私とユウコちゃんはそれぞれの紙袋を置いた。

いつもは「はいはい計算するまでその辺で待っててね」なんて面倒臭そうにいうのに、その時に限ってはなかなか口を開かない。そっと外の雨の様子を見て、私たちに向き直ったおばちゃんは、

「つい最近、子供達からの本の買取はいろんな事情でやめたんだけど、今日はこんな雨の中持ってきてくれたんだ、これで最後だからね」

そんな感じの言葉だったと思う。色々な事情というのはきっと、近くの書店で万引きした本を売りに来る小賢しい子供や家の本を勝手に売りに出すアホな子供の親からの意見があったのだろう。それでも髪の先を少し濡らしてきた私たちを見て、おばちゃんは最後の買取をしてくれた。

 

おばちゃんからもらった小銭を握りしめて、ユウコちゃんはちゃおコミックスの犬がテーマの漫画を買っていた。私はもちろん目星をつけていたえっちな漫画を買った。新條まゆ先生の1巻完結の作品だった覚えがある。

 

私とユウコちゃんは古本屋で買い物をすると、決まって通り道の神社の石段に座ってそれぞれ買ったばかりの漫画を読むというルーチンワークがあった。その日は雨だったので、お賽銭箱の右側と左側に、私とユウコちゃんがそれぞれ腰をかけて、静かに本を読んだのだ。

 

そんなわけで、昔から古本屋が好きだった。昔は漫画が好きだったけれど、今では小説やエッセイの方が読む作品数は多くなっている。

ブックオフは、地味で根暗で人の多いところが苦手な私の唯一の拠り所だ。

ブックオフにはパリピもギャルもいない、私の近所のブックオフはサラリーマンがほとんどで、何も気にすることはない。人の目を気にせず、それぞれの古本厳選タイムを楽しんでいるから心地がいい。

 

今週買ったのは、

・星の子 今村夏子

・往復書簡 初恋と不倫 坂元裕二

・そして生活はつづく 星野源

・秘密は日記に隠すもの 永井するみ

友罪 薬丸岳

以上の5冊。ダークホースは永井するみだ。この人の作品は初めて読むので、読む前からドキドキしている。恋に落ちるかスルーするか、本との出会いはそんな気がする。

恋に落ちるといいな。